私は、怪我をしたのは桂木君のせいとは思ってなかった。

桂木君に肩を触られたのには腹がたったけど、彼を突き飛ばしたために怪我をしたのは自分の不注意だ。

ちなみに子猫にも責任はない。急に手を引っ込めた私が悪いのだから。

女たらしのチャラい桂木君、という私の中のイメージと矛盾する彼の言動に、私は戸惑っていた。

「さあ」と桂木君に腕を引かれて我に返った私は、子猫が気になった。

ここに置き去りにして、もし意地悪な生徒に虐められたら可哀相だ。

「ちょっと待ってください。子猫ちゃんを置いては行けません」

と言うと、

「連れて行けばいい」

と桂木君は事もなげに言い、慣れた手つきで子猫を掴み上げ、彼のバッグに入れた。