俺が奥の二人掛けの席に座ると、小枝子が水のコップをコトンと置いた。

「一人?」

「ああ」

「また女の子と待ち合わせ?」

「いや」

「コーヒーでいい?」

「いいよ」

「ちょっと待ってね」

小枝子のスタイルのいい後ろ姿を見ながら、俺は苦笑いを浮かべた。

女たらしの自分に嫌気がさしたくせに、こうして女に会いに来るんだから、俺は根っからの女たらしだな。


小枝子がカチャっとコーヒーカップを俺の前に置いた。

「元気ないんじゃない?」

「かもな。部屋に行っていいか?」

「いいわよ。じゃあ、私も早めに帰るわね」


俺はコーヒーに砂糖を入れようとしてそれを止め、ブラックですすった。

コーヒーの苦さに顔をしかめ、ゴクッと飲み込むと空っぽの胃が悲鳴を上げた。

あの後、俺は明日香の弁当を一口も食えなかった。