桂木君の予期せぬ言葉に驚き、嬉しいような気持ちに一瞬なったけど、桂木君まで帰ったのでは意味がない。

「桂木君は、まだいてください」

私は感情を殺してそう言った。

なのに桂木君は、「いや、帰る」と、なおも言った。

それを聞いて私は、明日香を置いて桂木君と帰ってしまいたいと思った。

でも、そんな事出来るわけがない。そんな事を、していいわけがない。

感情がグチャグチャになり、込み上げる涙を必死に堪えながら、「お願いだからいてください」と言い、鞄を持ってその場から逃げ出した。

背後に明日香の「ありがとう。また明日ね」という声を聞き、桂木君の強い視線を感じながら…