「何で俺なんだよ?」

「あんた、自転車があるじゃない」

「自転車ぐらい貸してやるよ」

「私は何年も自転車なんか乗ってないんだから、危ないでしょ?」

「分かったよ。後で紬を駅に送りながら買って来るよ」

私を駅まで送ってくれる?
それは遠慮しとくべきかな、とか迷ってる私には関係なく、姉弟のやり取りは続いた。

「今行って来て」

「今? 何でだよ?」

「お店が閉まったら大変だからよ」

「まだ閉まらねえよ」

「そんな事、分からないじゃない」

「紬がいるのに、そんなのおかしいだろ? ね、お袋さん?」

桂木君に同意を求められ、初めてお母さんが口を開いた。

「買いに行きなさい」