「波多野、おいで」
あたしはヤツに向って手を広げる。
すると嫌そうな顔をして「行くかバカ」と言われた。
わかってる。
アンタは絶対自分からは来ないってことを。
あたしは渋々波多野の座るソファまで行って、ヤツを抱き締めた。
なんでか知らないが、悲しくてどうしようもなかった。
あのとき「泣かないで」と言ったあたしだったけど、それは自分のために言っていたのだとやっと気付く。
理央がいなくて、寂しい。
波多野が理央を好きで、寂しい。
とてもとても、寂しい。
波多野。
波多野。
「すきだよ」
「リカ…」
あたしは了承も得ずにその熱い唇に口づけた。
深く、深く。
あたしの存在を埋めつけるように。
唾液が零れた、と思ったらそれは自分の涙だった。
「あたしは、波多野がすき」
「すき」と、何度も呟いた。
波多野はあたしがどれだけアンタを好きかわかっちゃいない。
どれだけあたしが求めても、笑って流す。
お願いだ。
あたしを見て。
あたしだけを。
「選べなんて言わない」
「リカ…?」
波多野が不思議そうに顔を放した。
綺麗な瞳が、揺れてる。
「あたしか理央を選べ、なんて言わないから」
そんなこと。
そんな酷なこと、言わない。
言わないからさ。
「そばに、いさせて…」


