僕はベンチから立ち上がろうとしたがナナミが僕の手を握って出来なかった。


「ナナミ…」


ナナミは何も答えない。


僕はベンチに座った。


静かな時が流れた。


ニュースでは突入した青年をどうするべきか。


また警察の対応の遅さを報道していた。


無理もないことだ。


国の代表を含む多くの政治家が人質になっているのだ。


慎重に行動するしかないだろう。






どうでもよかった。






僕の脳裏にはそれしか浮かばなかった。


でもTVに映った映像を見て迷いが生じた。


伊藤の命が危ない。


親友に危機が迫っているというのに何もしないでいいのだろうか。








僕はTVを見ながら伊藤との出会いを振り返った。