「焦らなくていいんだよ。才能は突然目覚めるんだから」


「わかっています。でも一度出来たのならすぐにできるはずです」





僕は腕時計を付けた状態でこの前先生に切られた傷を再生しようとした。


腕時計は無能者用の装置が付いているが低い能力値が出るので練習にはよい。


また、空いている時間にも能力値を自分の意志で制御する練習もした。




「そう言われてもね。使ったのはもうかなり昔のことだからね」








森下先生が僕を今まで診てくれていたのは僕の能力が気になっていたためだった。


それに目の前に危険を及ぼすと分かる人間を野放しにしないためでもあった。


だから先生は僕を毎週通わせたのだろう。


おかげで世間にも問題を起こさない平凡な少年になってしまったが…。








それはそれでよかったのかもしれない。


伊藤に辻本、山本。


それにナナミと今では楽しい時間を過ごしているのだから…


でも皆の役に立つためにも早く能力がほしい。




「先生、何かいい方法はないでしょうか」




森下先生はあまり言いたくないような顔をしていた。



「あるには…あるよ」


「あるんですか。教えてください」




「それは教えられない。
ただ神山君から許可があればやれるよ。
ただし、君の命に関わることだから私は勧めないけど」



「お願いします。ぜひ教えてください」




先生はため息をついた。





「わかった。
少し時間がほしいから準備するまでもう少し練習やっててくれ。
ただ私の方を見ないでね」




「わかりました」



僕は言われたとおりに森下先生を見ずに練習を再開した。



僕は目を閉じて集中した。ただ傷を治すことに…








グサッ…







僕は自分のお腹を見た。






僕は刺されていた。





森下先生を見た。





「先生…。なんで…」







僕は死ぬと悟った。