才能に目覚めた少年

「何のことだよ」




山本が伊藤にツッコミを入れた。


山本タクヤは今年の春に知り合った。
クラスが同じになったからだ。
毎日部活に没頭する毎日だから一度も遊んだことがない。
話す時も伊藤が中心だから、僕は彼のことをあまり知らない。
ただ、陸上部の短距離に所属していて足が速いらしい。





「今日の四限目の能力検査で能力値が五十になったんだ」



伊藤は嬉しそうに話した。



「スッゲー」

「おめでとう」

「…」


僕は何も言わなかった。


辻本と山本は伊藤に祝福の言葉を言ったが僕は言わなかった。




能力に興味がないからだ。




「まあ、高校を卒業するまでの目標がまさか二年次で達成されるとは思わなくってな、嬉しいかぎりだよ」



伊藤は自慢げに言う。



「いいなー、私なんかまだ学校の平均値にも達してないのに…」


「それなら俺もだよ」






僕はただ彼らの話を聞きながらメニューを見ていた。



何にしようかな…。




「まあ、そんなわけで今日はおれのおごりだ、好きなものを頼んでくれ」




伊藤は鼻を高くして僕たちに言った。