僕は無視をしようとした。





一度鳴りやむが再度鳴り始めた。





僕は仕方がなく電話に出た。


どうせ伊藤だろう。




「よう、今空いてるか」


伊藤の声が聞こえた。




僕の友達は伊藤だけであり、この時間にかけてくるのも伊藤だけだから予測はできた。


「うん、空いてるよ」


「今からHFに来ない」



食事のお誘いだ。



「やめとく。今お腹が空いてないから…」




嘘だった。



朝から何も食べていなかった。



「そうか、ならいいや。
ミコトを誘う前にアカネとタクヤ、あとナナミに連絡したら今から来るって三人とも言ったんだけどな…」



「やっぱり、行ってもいい…」


「ミコトは来ないらしいから、また明日な」


「今からHFに行きます。行かせてください。」


「素直でよろしい。三十分後に会おう。それじゃあ」


「ちょっと待った。本当にナナミが来るんだろうな」


「男に二言はない」






僕は少し間を置いて「よろしくね」と言って電話を切った。
 

僕は急いで支度をした。


ここからHFまでは早くて二十分ある。


着替え時間を入れるとぴったり三十分になる。






計算されたと思った。



だけど、気にせずにHFに向かう。








時間ギリギリに着いた。