「嘘をつくな」



「嘘ではないよ。
嘘をつく意味がどこにあるんだ」






僕は組長から伊藤に視界を向けた。






血だらけの伊藤の姿を見ることができなかった。





「どうして…どうして伊藤が…」





「彼も哀れなものだ。
君と関わったばかりにこの若さで亡くなることになってしまったのだから」





「違う。あなたが殺したんだ」




「私ではないよ」




「…」





「君だ」






「違う」






「だが、安心してくれ。
すぐに彼のもとへ他の者を連れていく」




「…」






「確か君の仲間に藤沢という少女と山本という少年がいたね。
彼らももうじきあの世に行くんだ」




「エッ」





「『W』が私一人でないことぐらいわかるだろう。
私一人の命令で人ぐらいこの世に消すなんて簡単な事さ」






「やめてください。お願いします」






「もう遅いことだ」








ピー、ピー






組長の携帯が鳴った。僕は嫌な予感がした。