僕は椿十郎を見た。






森下先生ではない。




何を言っているんだ。






「森下…先生」






「そうだよ、私だよ。
神山君が知っている森下総合病院の森下だ」



「これはどういうことですか」



「…」




「ここに僕と同じ年の男が来たと思うんですが知りませんか」



「知っているよ」



「伊藤は今どこにいますか」



「そこにある扉の向こうに君の友達はいるよ。
だが、焦る必要はない。
私と話をしてくれたら彼を返そう」





「話って何ですか」






「神山君、私は『R』のボスだ」





「…」



「そして、『W』の幹部でもある」






「何を言っているんですか。
そもそもなんで森下先生が椿十郎なんですか」





「これは私の『憑依』能力だ。
この者の身体を借りて『R』のボスをやらせてもらった」





「なんでこんなことを…」





「一つは世界を変えるためだ」





「先生は僕が『『人としての価値を象徴するのが才能』という世界をどう思う』か質問した時に『今の世界が素晴らしい』と答えたじゃないですか。
それなのになんで…」