真夏の日、両親は死んだ。

僕だけが生き残った。

十年ほど前の話なのにあの時の出来事は覚えている。

悲しいわけじゃない。

辛いわけじゃない。

嬉しいわけじゃない。

僕は手に入れたんだ。

僕の才能を…






僕は目を覚ました。


空を見ると雲一つない快晴の天気だった。


青空の下、のんびりと昼寝をすれば気持ちいいだろう。




僕の名前が呼ばれている気がした。








クラスの皆が僕を見ていた。




「おい、ミコト。お前当てられているぞ」




友達の伊藤マサが僕に伝えた。


伊藤マサは僕の親友である。
小学校五年のときに僕が引っ越して初めての友達だ。
中学と同じ学校に通い、遊ぶ時もいつも一緒の中であった。
一度決めたことは意地でもやり通すところがある。



「え、何のこと」


そういえば、僕はいつから眠っていたのだろう。




あたりを見回すと、皆が僕を見ていた。


先生も僕を見ていた。




クラスの皆は楽しそうに見ているが、先生だけは違う。




「世界と才能について答えなさい」



先生が質問を言った。



「綾瀬先生、何を言えばいいんですか」



質問の意味がわからないから、聞いてみる。



「あなたが世界と才能について知っていることを何でも話せばいいのよ」



また、無茶苦茶なことを言う。


綾瀬マナ先生は僕たちの担任であり、歴史専門の先生だ。
普段は優しい先生で学校の皆から好かれている。
特に男子生徒からは告白されるほどである。
僕も初めは好きであった。
でも、授業を受けてみて気持ちは変わった。
質問が下手だからだ。
授業としては分かりやすいのに、質問に対する答え方をどうするのかが分からない。
だから、僕も含めて、クラスの皆は質問されるたびに、聞き返すのだ。
でも、美人だから許されることだ。




僕は立ちあがり、先生の方を見た。


クラスの皆も僕の方を見た。



処刑されるような気分だった。






仕方がない…。