「ねぇ神田さん…」
私はざっと壁に隠れた。
あらためて見たら
神田君と、…デビュー
したばかりの子が話していた
話してる内容は途切れ
途切れにしか聞こえない
何だか楽しそうに話している。
笑い声も聞こえる。
「シネマ授賞式に…羨ましいです…」
「そんな事……別にたいしたこと…」
女は苦手だって言ってた
わりに楽しそうじゃない
ちょっとムカムカしてきた
「…さやさんなら…いつか…出れるよ」
さやさん?
呼び捨て…なの
人をお前とか、
田中とか呼んでおいて
見ているのも
馬鹿馬鹿しくなって
私は廊下を引き返して
控え室に戻った

