明かりが消えた家。

暗く静まり返る。

ママはもう帰ってこない。

 「星羅、今から話すことは
余計に星羅を苦しめるかもしれ
ない。それでも聞いてほしい
いんだ。それが真希さんの意思
だったから。」

 「先生?」

 「俺は、星羅、君をずっと前
から知っているんだよ。」

 「どういうこと?」

 「君はまだ小学生だった。
まだ先生も生きていて、バカ
ばかりしていた俺をこの家に
連れてきてくれたんだ。」

 「この家に?」

 「星羅、憶えていないかい?
髪を金髪に染めて、怖い目つき
の男がよくこの家に上がり込んでた
事を。」

 「パパの生徒さんってママが言っ
てた。」

 「そう。そのどうしようもない男
が俺なんだ。」

 「嘘・・・。全然ちがう。」

 「先生、星羅のお父さんのおかげ
だよ。」

 「パパの?」

 「先生は、どうしようもない
俺のために一生懸命だった。
あの頃俺は、母親の男遊びに嫌気
がさしていた。そんな母親を注意
する事も出来ない父親にも。
そして俺は、親への反発から髪の
色を抜いて、不登校になった。
そのうち、親だけへの反発では
抑えられなくなって、俺は社会へ
牙を向けたんだ。
一通りの悪さはしたさ。
でも、先生だけはそんな俺を見捨
てなかった。」

 「パパがよく連れてきてた。
怖くてわたしは近づけなかった。」

 「そうだよな。」

 「俺は、先生の死をきっかけに
立ち直ったんだ。先生は俺に真希さん
と君を頼むと言ってくれたんだ。
こんな俺に。
俺がこの道に進んでいるのも先生が
色々と根回ししてくれていてね。
先生が亡くなった後、真希さんから
聞かされてビックリしたよ。
涙が止まらなかった。」

 「先生泣かないで・・・。」

 「すまない。ついな。情けないよな。」

 「うぅん。ちがうの。先生が泣いたら
わたしも泣いちゃう。話しなんて
きけなくなっちゃうから。」

 「星羅、君はどうしてうちの高校を
受験したんだ。」

 「ママに進められて。パパが教師を
していた高校だからって。」

 「そう。あの高校で僕は先生と
出会った。あの高校は俺の母校だよ。」