病院の匂いがする。 大嫌いな匂い。 パパを連れて行った時と同じ 匂い。 わたしは病院が大嫌いだった。 わたしは、先生に引きずられる ように、一歩一歩力なく歩いた。 先生は、急ぎたかったはずなのに。 ひとりで先にいけばいいのに。 そんなわたしに付き合ってくれた。 現実が、少しずつ少しずつ確実に 近づいてくる。 下を向いたまま歩くわたしの足が 先生が止まったと同時に止まる。 白いドアの前で。