わたしは、両手いっぱいの荷物
をその場に置いて何も考えず、
車道に飛び出した。
先生に気付いてほしくて。
先生に追いつきたくて。
でも、先生が乗ってる車は、
信号が青に変わると同時にわた
しの視界から消えて行った。
〖ピッピー〗〖ブッブー〗
わたしは、背後から気高く聞こ
えるクラクションも耳に入って
はなかったんだ。
「危ない!!」
わたしは、抱きかかえられて、
歩道へと吹っ飛んだ。
何が起きてるのかさえわからな
くて。
「星羅、危ないだろう!!」
でもその声には聞き覚えがあって。
わたしは、抱きしめられたまま
振り返った。
そこには、直樹がいて。
わたしは、驚いて直樹の腕の中
から飛び起きた。
足に痛みが走る。
足を引きずりながら歩くわたし
を軽々と直樹が抱きかかえる。
同じ年のくせに辞めてよ。
ちょっと見ない間に男になってる
直樹の体。
わたしの初恋の男の子。
そして、初失恋の相手。
わたしの従兄。
新垣直樹



