文之はそれだけ言うと先に店へと歩き出していた。

(文之は照れていたのだろうか?)

葵は文之の言われた通り、その指に付けると慌てて文之の後を追うように車を降りた。


凍えそうな二月の空に左手を少しかざして見せた。

指輪は店のネオンの光に反射して小さなまばゆさを放つ。


―今夜も長い夜になりそうだ―