「じゃあそっちのカウンターに座って。何か飲む?」

ママと思われるその女性は慌ただしく私を扱う。
「歳は?」

「20歳です。」

「家は?近いの?」

「北野市です。」

「え?北野市?ここまでものすごく時間掛かるじゃない。もっと繁華街が途中にあるのにどうしてうちを選んだのかしら?」

「とてもアットホームな感じがして・・。
あと小さなお店が良かったんです。初めてなので。」

あっそうと言わんばかりの顔つきで次の質問に続く。

「お酒は飲めるの?」

「…はい。少しだけなら大丈夫です。」

「私はミキ。一応この店のママにあたるわ。
葵ちゃんには今日一日働いてもらって雰囲気をつかんでもらえばいいと思うの。続けるかどうかはその後また話しましょう。」

ミキママはそれだけを最後に席を立つ。

細い体に纏う薄ピンクの着物がとても良く似合う。

(こんなに華奢な体でお店一つを切り盛りするなんて出来るのだろうか。)

そんなことを思うのも束の間。葵はすぐに自分の置かれた状況に気が付いた。