陸哉は俺のポケットからイチゴのアメを取り出すと、そのまま包装紙を取って自分の口に入れた




またこいつは勝手に…!




『それがどうしたって言うんだよ』


『葉憂が女の子にアメを渡すなんてあの子以来だからな……しかもメッセージ付きの』


俺の頭の中にある女の顔が浮かぶ……


陸哉の奴……俺が忘れようとしてる時に……!


『あの時はアメ…渡せなかったんだっけ?』


俺は懐かしそうに遠い目をしている陸哉の頭を叩いた


陸哉は「痛っ」と短く声を漏らして叩かれた頭を押さえる


『何すんだよー』


『昔の話だろ?忘れろよ』


俺がそう言うと、しばしの沈黙の後に陸哉が口を開いた


『その昔の話を引きずってんのは誰だよ』


急に鋭い口調になった陸哉……


俺はいつもと違う陸哉の雰囲気に何も言えなくなってしまう


『何が“忘れろ”だよ……自分が1番忘れてないくせに』


…………確かに


陸哉の言う通りだ……


俺がこのアメを手放せないのも……好きな女が出来ないのも……


全部、俺があの女の事を忘れてないからだ


俺が…陸哉に言える立場じゃない