夏の朝。

ギラギラと照りつける日射しの中、私は自転車で駅へと向かう。

『あーっ!ヤバいっ!乗り遅れちゃうー』

9:21発の普通列車に乗って、隣街まで仕事に向かう。

発車まであと2分というところで駅にたどり着いた。

『いそがなきゃ』

カバンに入ってる定期券を取り出し、改札口へ駆けつける私。


改札口には……

彼が……

いない……


『はぁっ』

ため息ひとつ。

心の中で

『そうよね…春に異動になったんだからいるわけないよね』


春まで私の想ってる人が、この駅に勤務していた。

異動先はわからない…

なぜ、好きになったのかはわからない…

ただ、声が、私の心に響いたのだ。

低くもなく高くもない、丁度良い声。

彼の声を毎日聞くのが日課だった。

声を聞けるだけで幸せだったんです…