小さい頃はよくお母さんに作ってもらっていたから、朝ご飯イコールパンケーキみたいな方程式が自分でも気付かないうちに、頭のどこかに組み込まれているのかもしれない。



冷蔵庫の中を覗いてみたら、スクランブルエッグとウィンナー、サラダもセットにできそうだった。


そうだ。


せっかくだし、アイチにも声をかけよう。


彼女はあたしの作ったパンケーキが好きだ。


甘さを控えているところがすごく自分好みだと、いつだったか評論家みたいに誉めていたことがあった。


ダイニングテーブルの上にあったケータイを開くと、001番に登録されているアイチの番号を画面に写し出す。


通話ボタンを押すと、コール音はすぐに聞こえてきた。


それを聞きながら、キッチンに入って、ボールや軽量カップを用意する。


丁度、冷蔵庫の中の牛乳に手を伸ばした時、コール音は留守電に切り替わった。


いつもだったら3コール待たずに元気な声が聞こえてくるんだけれど、もしかしたら今日は駆とデートだったのかもしれない。


通話終了ボタンを押してから、大した用もなく電話をしてしまったことを後悔した。