「でも、花やしきなんて懐かしいわねぇ。あの辺も随分変わっちゃったかしらねぇ」
千津ちゃんはお茶の入った湯飲みを、アイチとあたしの前に1つずつ置く。
白地に淡い桃色の花が咲いた湯飲みは、あたしのお気に入りの中の1つだ。
「愛生たちがまだ小さい頃は3人でよく遊びに行ったけど、そんなのもう覚えてないでしょう?」
千津ちゃんは笑いながらそう言ったけれど、アイチもあたしも忘れるわけがなかった。
「覚えてるよ。高く上がるお菓子の家とか」
「家の中を通り抜けるジェットコースターとかね」
「何か部屋がグルグル回る乗り物もあったよね。毎回、乗り終わった後、フラフラするの」
「あと、白鳥が水の上回るのもあったよ」
思い出し始めると、その記憶は次々に出てきた。
「歩くお化け屋敷と乗り物に乗るお化け屋敷が1ヶ所に集中してるんだよね。そこ通る度、誰かさんが怖がるから覚えちゃったよ」
「いや、誰かさんは迷路からなかなか出られなくて半ベソになってたような気がするなぁ」
「あの時は真海子が先に泣き出したんだよ」
「でも、半ベソかいてたのは事実じゃん」
