テラス席が3席あるドッグカフェは、手入れの行き届いたガーデニングに囲まれて、おしゃれな雰囲気を漂わせていた。


ガラスのドアの向こうには、ケーキの入った大きなウィンドーがあって、その上にはカゴに入った焼き菓子もある。


店の敷地には入らず、道路からそっと覗いて、アイチの姿を探してみる。


茶髪のショートに、ピシッとした白いシャツ。


黒のソムリエエプロンを付けたアイチは、チワワを連れたおばさん3人の接客中だった。


メニューを開いて見せながら、感じのいい笑顔で何かを説明しているらしい。


時々、おばさんたちから質問が飛ぶと、ちゃんと目を見て話を聞いている。



仕事中のアイチは、みんなといる時よりずっと大人っぽい。


態度、しぐさ、歩き方、すべてが落ち着いていて、あれが昨日、自転車を漕いでふざけていたのと同一人物だとはとてもじゃないけれど思えない。


きっと彼女も考えていることを現実にするために一生懸命なんだと思う。


今はまだいっぱいいっぱい。


でもいつか。


笑顔で感じよく接客するアイチの向こうに、スイーツを作っている自分の姿を見たような気がした。