そんなことを考えていた時だった。


前から、小学校高学年くらいの女の子がゴールデンレトリバーと一緒に颯爽と歩いて来た。


赤いバンダナを付けたその犬はしっかりとしつけがされているらしく、女の子の横にピタリと張り付くようにして歩いている。


女の子は一度、愛犬をチラリと見ると、また前を向いて誇らしげな顔をする。


そんな1人と1匹の姿は、小さい頃のアイチと、彼女の愛犬ディンゴの存在を思い出させた。


ディンゴはアイチが小学校3年生の時に、彼女の家にやってきたシェパード犬で、とても優れた犬だった。


まるで人の言葉を理解しているような振る舞いに、すごくいい運動神経。


そんなディンゴを、あたしたちも、商店街の大人たちもみんな大好きだった。


大好きだったのに…




あたしたちが小学6年生の冬、ディンゴは事故に遭って亡くなってしまった。


と、言うことになっているけれど、本当は事故なんかじゃないことをアイチと千津ちゃんとあたしだけが知っている。



振り返ると、女の子とゴールデンレトリバーは相変わらず颯爽と歩いていた。


その後ろ姿を見ながら、あの子たちは、と幸せを願わずにはいられなかった。