そんな風に思うと言うことは、やっぱり今が返すべき時なんだ。



ローテーブルの上の鍵を手に取ると、そのうちの1本を外しにかかった。


家の鍵じゃない、もう1本を外すために、指先は動かされる。


けれど、やっぱり、その指はすぐにためらいで止まった。




もうずっと前から合い鍵を返すことなんて考えていた。


考えていたのに、いざとなるとやっぱり決心が鈍ってしまう。


今までもそうして何度となく、返すタイミングを逃してきた。



長年、持ち続けてきた鍵は、犬のマスコットと2本の鍵でやっとあたしの鍵になる。


1本を外してしまったら、そこに待っているのは大きな違和感だけだ。


けれど、もう、その違和感にも少しずつ慣れて行かなきゃいけない時期だと言うこともよくわかっている。




頭の中を真っ白にすると、素早くマスコットから1本の鍵を外した。


家の鍵じゃないもう1本の鍵。


それはあたしの思いとは反対に、びっくりするほど、簡単に外れた。


外れた。



外した1本をテーブルの上に置いた。


返しに行こう。


余計なことを考えないうちに。