勝ちゃんはそんなあたしをしばらく見つめていた後、今にも泣き出しそうな顔で笑った。
そしてあたしの手を取る。
「会いに行こうぜ」
その瞬間だった。
「おい、愛生!冗談だろ!?なぁ、ふざけんなよ!目、開けろよ!」
廊下の少し先、ドアが開けっ放しになっている部屋から、泣き声の混じったシーやんの怒鳴り声が聞こえてきた。
「ねぇ、愛生!お願いだから目、開けてよ!愛生!」
チェリーの声はそのまま泣き叫ぶ声に変わった。
勝ちゃんに掴まれていた手を振りほどくと、一気に、元来た道を引き返した。
廊下を走って、角を曲がって、救急外来の扉を出る。
言い様のない恐怖だった。
何がどう怖いのかなんて言葉にできない。
ただ、怖くて怖くて仕方ないから、その場から走り出すしかなかった。
救急外来の扉を出て、少し走ったところで勝ちゃんに手を掴まれた。
「真海子!」
「やだ、やだ、やだ、やだ、やだ!」
今、目の前にある最低で最悪であまりに過酷で残酷過ぎる現実から、とにかくすぐに逃げ出してしまいたかった。
