彼女は指定席から立ち上がると、ドアの方に向かった。


どうやらもう帰る気でいるらしい。


彼女はドアに向かって歩きながら、たった一言、こっちに振り返ることなく言った。


「みんな、ホント、大好き」


こんなかわいいアイチを、あたしたちがこのまま帰すはずがない。


5人全員が彼女の腕や体をがっしりと掴んだ。


「何だよ、感動しちゃった?」


アイチの肩に手を回したシーやんがからかうようにそう言うと、勝ちゃんも続ける。


「愛生、案外、女の子らしいとこあるんだな」


「うるさい」


アイチはそう言って、手の甲で涙を拭いた。


するとそれを見ていた駆がニヤニヤ笑いながら言う。


「だって、女の子だもん」


「腹立つなぁー」


そう言ったアイチに、あたしもからかうような視線を送った。


「今日、バイク運転してた人とは思えないね」


その言葉に駆が驚いた表情でアイチを見る。


「やっと乗せてあげたんだ」


「うるさい」


そう言ってまだ涙を拭いているアイチのTシャツの袖でチェリーは自分の涙を拭いた。