ただ、ラッパのマークだけはきっとクラクションなんだろうなと想像がついた。


「何、やってんの?」


その声に振り返ると、アイチはあきれたような表情でこっちを見ていた。


「すごいいっぱいスイッチあるんだね」


そう言ったあたしに、アイチは薄い冊子を渡してくる。


「これ、しっかり読んどいてね」


しっかり、を強調して、彼女はバイクのハンドルにヘルメットを掛ける。


渡された冊子に目を落とすと、それは2人乗りの手引きだった。


さすが何年も後ろに乗せるのを拒否してきたアイチ。


用意周到だ。


とは言え、まだ学生の頃、夏休みの手引きなんかをもらった時は、彼女が1番に丸めて遊んでいたような気がするけれど。


「何、笑ってんの?」


「べ、別に」


まずい、まずい。


思わず笑ってしまっていた。


顔を引き締めて、とりあえずそれをきっちり読むと、あたしは勢いよく顔を上げる。


「読みました!」


「よし」


そう言って彼女は冊子を自分の自転車のカゴに入れた。


「そいじゃ、行きますか」