勝ちゃんは実家の花屋で午後6時まで働いた後、清澄エッグでバイトをしている。


この時間は、いつもカウンターの中にいて、飲みに行ってしまった店長の代わりに後片付けをしたり、みんなのドリンクを作ったりしている。


あたしはそれを知っているから、今日もカウンターの中をチラッとしか見ることができない。


目が合ってしまったら、動きがぎこちなくなりそうで、そうなるのを避けたいんだ。


とは言え、たとえその一瞬でも、彼がどんな顔をしているかぐらいはしっかり見ている。


今日はこっちを見て、ちょっと驚いたような表情。


シーやんに向いていた視線がチェリーに来て、目が合いそうになったから、あたしはとっさに前にいたチェリーのふわふわの髪の毛を見た。


「おー、今日は珍しいな。3人一緒?」


勝ちゃんはあたしたち3人が揃って来たことを珍しがったけれど、もっと珍しい光景がカウンター席の奥から3つ目に広がっていた。


「駆(かける)!髪、いいじゃん!」


ドキッとした。


それは恋愛で起こるドキッとはかけ離れていて、ビクッと言った方が正しいのかもしれない。