本当にどこまでも緊張感がない。
多部ちゃんは黙ったまま、うつむいていた。
あたしから言うわけにもいかないから、あたしも黙る。
「とりあえず何か頼んでいい?」
アイチが明るくそう言ってメニューを開くと、多部ちゃんは固い表情のまま「どうぞ」とだけ言った。
何だかぎこちない空気が流れている。
それからの時間はものすごく長く感じた。
きっとアイチはパッとメニューを注文して、サッとドリンクバーにジンジャーエールを取りに行って、大した時間を使わなかったと思う。
それでもあたしにとっては、その時間がものすごく長かった。
席に着いたアイチは、今、取ってきたジンジャーエールにストローを刺して、1口すする。
多部ちゃんは自分の横にあった灰皿をアイチの前に差し出した。
「先輩、気にせず吸ってくださいね。話は吸いながらでいいですから」
イライラ防止策か。
そもそもアイチは吸えないことでそんなにイライラするようなタイプじゃない。
けれど、差し出しておく判断は正解だったと思う。
