入口の方から人が歩いて来る度に、あたしの視線はそっちに連れていかれた。
約束の時間が近付いてくるにつれて、あたしの緊張も少しずつ大きくなっていく。
そして、時間丁度の今は緊張もピークだ。
それは多部ちゃんも同じことらしく、視線をテーブルにやったまま、さっきから何度となく、コーラのストローに口をつけている。
そんな中、アイチは何とも緊張感のない、いつも通りの態度でやってきた。
後輩に話があると呼び出されたら、普通、もっと緊張感を持ってくるものなんじゃないのか。
少なくとも、あたしはこの前、ものすごい緊張感を持ってきた。
アイチはあたしと目が合うなり、一瞬驚いた表情を見せた。
その後で状況が飲み込めていないような表情でこっちに向かって歩いてくる。
けれど、テーブルに着く頃には笑みが浮かんでいて、不思議そうな顔であたしを見る。
「あれ?何で?」
「すみません。あたしが呼んで、来てもらったんです」
そう言った多部ちゃんはもう既にアイチの方を見れずにいた。
アイチはイスに座りながら、ごく軽い調子で言う。
「え?何事?」
