小さい頃に習うこと、大きくなってわかること



「はい。部活で」


ハキハキとそう答えると、彼女はイスの上に置いてあるスポーツバッグを2、3回叩いた。


「何か頼んだ?」


彼女の前にはドリンクバーで注いできたコーラのグラスが置いてあった。


とりあえずメニューを開きながらそう聞いてみると、彼女は首を横に振った。


「今、金欠なんです」


彼女はそう言ってかわいらしく笑ったけれど、社会人として「あぁ、そうなの」なんて流すわけにはいかない。


「おごるよ。何がいい?」


そう言ってみると、彼女は笑いを消して、大きく首を横に振った。


「おごらなきゃいけないのはあたしの方です。わざわざ来てもらっただけで十分ですから」


「いや、あたし一応、社会人だからさ。これくらいは」


そう言ったけれど、彼女はやっぱり頷かなかった。


「先輩、気にせず頼んでください」


とくにお腹は空いていなかった。


デザートが食べたかったわけでもなかったし、別に飲み物だけでも構わなかった。


けれど、あたしはメニューの横にあるボタンを押して、やってきた店員にドリンクバーとフレンチトーストを注文した。