けれど、家が近付くにつれて、彼の口数が減り始めたのを覚えている。
うちのマンションのすぐ横には小さな川が流れていて、そこに架かる橋の上に来た時、あたしの後を少し遅れて歩いていた勝ちゃんは言った。
「真海子。おれ、真海子が好き」
鼻歌を歌いながら少し先を歩いていたあたしはびっくりして振り返った。
あたしだって勝ちゃんのことが好きだった。
彼女になりたいと思っていた。
けれど、全然心の準備ができていなかったせいで、思わず笑ってしまったんだ。
「今更どうしたの?あたしだって勝ちゃんのこと好きだよ?」
もちろん、恋愛としての感情で告白されていたのは知っていた。
けれど、あたしは友達としての答えを返すことしかできなかった。
勝ちゃんがこっちに向かって歩いて来た時、反射的に身構える自分がいた。
それでも彼はそこに隙を見つけて、あたしの口にキスをした。
そして一言、「こう言うこと」とだけ言って、帰って行ってしまった。
その後、彼が告白の返事を催促したことは1度もない。
