けれど、今のあたしはこの沈黙に耐えられない。


2人きりになる心の準備ができていたなら、まだよかった。


突然、2人きりにされたあたしの頭はパニック状態で、焦りはますます話題を見つけにくくする。


「うわ、すげぇ」


その声に思いっきり顔を上げると、勝ちゃんは昔、よく遊んだ公園の方を見ていた。


その横にはちょっと前までスポーツセンターがあったけれど、今はもう取り壊されて、秋にオープン予定のホームセンターの建物ができていた。


「もうこんなになってんだ。すげぇな」


「そっか。こっちの方、あんまり来ないもんね」


あたしは毎日見ている景色でも、彼の目には新鮮に映る。


彼はしばらく建物を見ていると、そのうち、笑みを浮かべて懐かしそうに言った。


「よくあのスポーツセンターでドロケーやったよな」


「懐かしい!」


ドロケーと言う響きが懐かしかった。


小さい頃は毎日のように使っていた言葉も、この歳になるとまず会話に出てくることはない。


あたしたちはその場に立ち止まって、しばらくホームセンターの立ったスポーツセンターの跡地を眺めていた。