いつも通り。
それは頭で考えた途端に、崩れて行ってしまうものなんだと思う。
それならもうそんなことにこだわるのはやめて、ただ普通にしていればいい。
いや、いつも通りと普通は同じことだ。
午後11時。
そんなことを悶々と考えながら、あたしはアパートの下に立っていた。
いつもより5分も前に来てしまったけれど、アイチが早めに来ることもなく、今が丁度、約束の時間ジャストだ。
そろそろ彼女はあの階段を降りてくる。
あたしはそれをいつも通りに迎えればいい。
いつも通りって何だ。
だからいつも通りなんて考えちゃいけないんだって。
じゃあ、どうやって迎えればいいの。
だからいつも通り…
だからっ!
2階の1番端でドアの閉まる音がした。
心臓がドキリと大きく波打つ。
鍵をかける音。
スタスタと歩くサンダルの音。
階段に姿を現した彼女はまさにいつも通りだった。
降りて来た彼女はあたしを見て笑う。
「今日は珍しいね」
「え?」
「バイク乗せてって言わないんだ」
