体はもちろんのこと、頭もうまく動かない。
ただ1つ、これをやった犯人だけはびっくりするほどはっきり、頭の中に姿を現していた。
部屋の中央、アイチは気まずそうな表情を浮かべてタバコをくわえていた。
片付けの途中だったのか、手には何枚ものMDを持っている。
彼女はそのMDを置いて、タバコを手に持つと、少し困ったような顔をしながらも笑った。
「ごめん、ぐちゃぐちゃしてて」
そんな笑顔を浮かべるアイチの唇の端が切れていた。
Tシャツにはポタポタと鮮やかな赤い染みが付いている。
情けないほど、頭も体も動かなかった。
今度、アイチに何かしたらぶっ殺す。
つい昨日、そんなことを平気で言った自分はなんて軽率で愚かな人間なんだろう。
この部屋の状態とアイチの姿を見て、自分の無力さを思い知った。
だって、あの男は平気で部屋をこんな状態にしていく。
平気で人をあんな風に傷付けていく。
それはもう恐怖以外の何ものでもなかった。
それでも救いたかった。
アイチのことだけは何としてでも救いたかった。
