「おばあちゃん!」

ポンッと老母の肩を叩く、水色の着物をまとった少女。

少女の名は、百合子。

「あぁ、百合子か。どうした?」

百合子は、美しい赤い櫛(くし)を出した。

「平吉さんから貰ったの」

平吉とは、百合子の恋人のことだ。

だが、老母は悲しげな顔をした。

「赤い櫛…か」

老母は、空を見上げた。

そして、溜め息をつく。

「今頃だったかな。あれは…」

老母の言葉に、百合子は首を傾げた。

「おばあちゃん?…気になるなぁ。何でもいいから、話してよ!」

百合子の言葉に、老母は話し始めた。