地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー

「抱っこ!」とせがんで来たが、俺の服を引っ張って体を引き寄せ、首に腕を回される。


「おい……杏?」


首筋に顔をうずめてスリスリされ、ギューっと抱き着かれた。


あぁ……コイツ、もう離れる気はないな。

しばらくは、このままだ。


杏が自ら抱き着いて来てくれたことが嬉しくて、クスッと笑みをこぼす。

そのまま杏を抱き上げて、片手で落ちないように支えると、ベンチに置いてあった荷物も持った。

相変わらず軽いな……。



「……場所変えるか」


小さく呟いて、近くの空き教室へ向かう。

室内の方が、色々と都合が良いからな。



人気のない教室に入り、一応カギを閉めた。

窓際へ行き、腰を下ろす。


俺が移動している間に、またスヤスヤと寝ていた杏の寝顔を眺めて……頭を撫でた。