「さ、杏樹。さっきのことを実行しようか? 最後まで……。その後、俺の腕の中で……あっちの世界に送ってあげる」
もう疲れた。
抵抗する体力もない。
ご飯も食べてないし、水も飲んでない。
この暑い閉め切った倉庫内じゃ……熱中症になっちゃうよ……。
抵抗をやめたあたしを、橘は満足そうに眺めた。
「それで、杏樹は永遠に俺のモノだ……」
あたしは……アンタのモノじゃ……。
心の中では、反抗の言葉がまだ出て来るのに、体が言うことを聞かない。
――カサッ
橘があたしのワンピースの裾から手を入れてくる。
「杏樹は俺のモノ」
ニヤッと笑うヤツに、悪寒が走った。
怖くなって、ギュッと目をつむる。
あたしもここで終わりだ。
バイバイ……陸―――。
心の中で、別れを告げた瞬間。
――パリンッ……パリンッ!
あたしの手足を行動を制限していた鎖が、一瞬で、粉々になった。