「んん~んん~~!!」


必死で、橘に抵抗する。


電話のあとから、コイツはあたしを殴るけるを繰り返していた。

――ボコッ……!

橘の拳が、あたしの頬にヒットする。


痛いっ……。

殴られるのが、こんなに痛いって知らなかった。

ゲンコツはされたことあったけど……お父さんたちからも、陸からも、殴られたことはなかったから。


――カシャン!



あたしの腕を吊っている鎖の音が、耳障り。


体が揺れる度に、鎖もカシャンカシャンと鳴る。



これさえ、外せたら。

片手だけでも……!


そうは願っても、橘の男の力でくくりつけられた手は、まったく外せなかった。





陸……もう解けた?


あたしの精一杯の暗号。




あんなに頭いいんだから、気づいてくれるよね?



強調したでしょ?



閻魔大王、ぬらりひょん、大悪魔って。


3大妖怪って。



一度しか言わなかったけど……“棚うちと木庭素に”って、わかった?



あれ、平仮名に直すんだよ?


ねぇ……頼むから……あたしを見つけて。