それを、この男は……!


ギロッと橘を睨みつける。



「杏樹のまわりって、男が多いよね? 高瀬に相澤、西国に……滝本」



はァ?


いきなりの意味不明な言葉に、顔をしかめた。



「まったくしぶといよ。あれだけボコれば、死んでくれると思っていたのに」



その一言に、ピンとくる。


まさか……。

コイツが……!?


あたしの表情から、心情を読み取ったのか、ヤツはフッと笑って続けた。


「あー俺だよ? 高瀬たちをボコったのも、ラブレターもプレゼントもね。気に入ってくれた?」


――ギリッ!


食いしばっていた歯から、そんな音が聞こえる。




コイツだったんだ。


あたしの大切な人たちを傷つけたのは。



怒りで……全身の血が沸騰しそうだ。



今一瞬で、橘を殺せると思う。

でも、術を使おうにも、手は鎖で巻きつけられていて……ダメだ。


呪文を唱えるにも、口を塞がれていたら……何も言えない。



陰陽師としての力も使えないなんて。

ここから、逃げ出せないじゃない!!


いや、考えなきゃ。

ここから脱出する方法。