だけど……。


「あのな、さっきから女たちに囲まれて……誘いを断って、ようやく来れて、喉乾いてたんだよ」


ボソボソと、耳元で、あたしにしか聞こえない音量で話す。

そう言われたら何も言えないじゃないかぁ。

それでも、おいしく飲んでいたアイスティーを取られたので、プーッと頬を膨らませた。

あとで、陸にアイス買ってもらおっと!


そう決めて、ふと……まわりを見た瞬間。


「え……」


えーと。

陸みたいな人気者がいたら、女の子が集まるわけで。

それに、ここはカフェテリアでお昼時なので、多くの学生がいる。

この場にいる多くの女の子たちが、あたしたちふたりに、注目しておられました。


「陸くんって、彼女と仲良いんだ」

「ホント! なんの迷いもなく彼女のモノ飲んだよね」

「えー! 見せつけられてヤダなぁ~」


まわりにいた女の子たちから、聞こえてきた会話。

あぁ……本当に注目の的ですよね。


「まったく、アンタたちバカップルは。雅人に会えない私に対するイジメかしら?」


零ちゃんも呆れ気味に笑いながら言った。

「そんなんじゃないよ!」


両手をブンブンと振って否定するも。


「はいはい。イチャつくのは、家でやりなさいね」


彼女は、あたしに背を向けながら軽く手を振って、カフェテリアの食券売場へと歩いて行く。



ホントに、イチャつくつもりじゃなかったのに!


こうなったのも、元はと言えば陸のせいだ。





プーッと頬を膨らませながら、あたしも食券売場へと急いだ。