そう言った陸の声は、今にも消えそうなくらい小さくて。


体は震えていた。





「陸?」



あたしの肩口から動かないヤツの背中を撫でた。




「俺の……昔の話……聞くか?」




途切れ途切れに話す言葉は、陸の過去の話の重さが見えるようで。


でも、今まで一度も聞いたことのなかった……陸の話。


どんな内容なのか、気になった。



「あたしが聞いてもいいの?」

「……いつかはお前に話そうって思ってた。けど、この話をして、杏が離れて行かないか……怖い」




――ギュッ


まるで、『離れていくな』と言わんばかりに、強く抱きしめられる。


その抱き寄せる手も震えていて……本当に怖がっているんだとわかった。





「大丈夫だよ。話して……?」



応えるように、あたしも抱きしめ返して、そう伝えた。







「俺の……中1の頃から始まったことだ」






ゆっくりと、きつく結んでいた紐をほどくように、陸は話し始める。



それは、思ってもみない内容だった―――……。