「……おじゃまします」

「どうぞ」

ニッコリ微笑んで言うと、杏は眉間にシワを寄せたままイスに座る。

もちろん……俺の隣に。


「ホントちょうどよかったわよ。助かったわ蓮」

同じく蓮の隣に座った朝比奈が、ニコニコした顔でコーヒーに口を付けた。


「うぅ〜……なんで陸の横なの……」

それに対して、杏は泣きそうな表情だ。


「何。俺の隣がイヤなわけ?」

「うん」

俺からの問い掛けに、即答で返す。

おい。

ちょっと傷つくんだけど……。


「……気がついてないの!? あたし、周りにいる女の子達からめちゃくちゃ睨まれてるんだよ!?」


小声で、後ろを指差しながら言って来た。


バーカ。んなの、気付いてるに決まってるだろ。

むしろ……気がついてねぇのは、杏……お前の方だ。