優しい温もりの中で、寝返りを打つ。


「……ん……」


閉じていた瞼を持ち上げると、焦点の合わない視界。


へ?

ここどこ?


パチパチと瞬きを繰り返すと、キレイな木目の天井が目に入った。


「うんしょ……」


肘に力を入れて、体を起こし、辺りを見渡す。

暗闇になれたからか、自分がいる場所が理解できた。


「あ……あたしの部屋か」


ここは、ばあちゃんの家での、あたしに与えられた一室で。

畳の上に布団を敷き、あたしは寝ていたようだった。


そうだ、祈祷が終わって、寝ちゃったんだっけ?


「叔父さんたちが運んでくれたのかな?」


祈祷を行っていたのは、神崎家の最奥、北の部屋。


あたしが泊まるように言われたのは、真逆の南の部屋だったから……ここにいるってことは、誰かが寝かせてくれたってことだ。

あたしは祈祷の時に来た着物から、浴衣に着替えさせられていた。



後でお礼言わなきゃ……。


部屋の灯りはすべて消してあり、中に入って来るのは、満月みたいに明るい月の光だけ。

それでも十分部屋の位置関係は見えたので、明るく思えた。

今晩は、月にキレイな夜らしい。


あとで、月の観賞でもしようか、と思った瞬間。


「杏樹ちゃん、起きた?」


部屋の外から、早和ちゃんの声が聞こえる。


「うん」


コクンと頷いて返事をすると、部屋の障子を開けられた。


「もう体いいの? 平気?」


少々慌てた様子で、彼女はあたしの隣に腰を下ろす。


「大丈夫」


そう言うと、早和ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。


「心配したよ。丸2日寝てたんだから……」


あれま。

そんなにぐっすりと寝てたんですか……。