じいちゃんに頼んで、明日から行くことになっている。


「大丈夫。1週間で帰って来るから」


――ギュッ

陸の両手を握って、ニッコリと笑った。


「でも……」


ヤツは、あたしが何度説得しても、あまりいい顔をしない。

自分もついて行くと言って、聞かないんだよね。



陸がここまでワガママを言うのは……高2の時のことが原因。


当時、九州の福岡での仕事の依頼が来て、あたしがひとりで行ったんだけど……。


ちょっと事件に巻き込まれちゃって、あたしは知らない男たちに襲われかけた。


色々と理由があって、一度死んだということになり、陸は仕事があったとしても、自分がついて行けばよかったと後悔したらしいの。



だから、あたしがひとりで遠地に行くのを、拒んでる。

でも、陸はあたしが入院していた1週間、仕事を休んでた。


社長の身の陸が、これ以上……休むわけにはいかない。


退院した今、もう仕事に戻っていいのに、あたしが京都に発つまで、一緒にいる気らしい。





「これから行くのは、京都版神崎家だよ? 1週間、その家からは外に出ないし、あの時みたいなことにはならないから……心配しないで?」



ね?というように、首を傾げて説得を試みるが、陸は沈んだ表情のまま。


どうしよう……もうこうやって、3日過ごしているんだけどなぁ……。





すると。

――グイッ


「きゃっ……」


いきなり腕を引き寄せられて、陸の首筋に顔をうずめた。

後頭部と背中に、腕をまわされ……抱きしめられる。


「本当か? 絶対に事件に巻き込まれねーのか?」


不安げな声音で問いかけられ、何度も背中を撫でられた。