ところが。



その直後に。



杏が……驚くべき一言は発した。




「じいちゃん」

「なんじゃ?」


じいちゃんの表情は、かわいい孫が無事に眠りから覚めたので、何でも願いは聞いてやろうという感じで。


杏は、俺の腕の中にいたまま、彼らに話しかける。



「あのね、退院したら……行きたいところがあるの」



上手く大きな声が出せないため、小声ではあるが、一生懸命に話す杏。


「言ってみなさい。どこじゃ?」


じいちゃんが優しい声で言うと、杏は不意に俺を見上げた。


「ん?」


なんだ?というような顔をしてみるが、杏はじいちゃんに視線を戻す。
何だったんだよ。



そう思ったのもつかの間。




「ばあちゃんのところに行きたい」




じいちゃんの目を見つめたまま、はっきりとそう言った。


「は? なんじゃ? ばあちゃんのところにか?」


じいちゃんが問いかけると、杏はコクンと頷く。


「どうしてだ?」


親父さんが聞くと、俺の服を握る手に少し力が入った。








「ばあちゃんに……力を借りたい。大切な人みんなを守れるように」






そうやって、もう『決めたから』というような顔で、言ったんだ―――……。