――陸side――


――ピッ……ピッ……

規則的な機械音が聞こえる病室内。


――スーッ……ハーッ……

透明な緑色の酸素マスクから、ゆっくりとだが呼吸も聞こえる。


「熱が下がりませんね。脱水状態も変わらないし……」


聴診器を首からかけた医者が、数枚のプリントを見ながら言った。


「そうですか……」


ベッドに横たわる人物を見て、小さくため息をつく。


「もう少し、様子を見ましょう」

「はい、お願いします」


ベッド近くのイスから立ち上がり、軽く頭を下げた。


それを見た医者は、俺の肩をポンッと叩いて、病室を出て行く。


――ガチャン……


スライド式の扉が閉まってから、またイスに腰を下ろした。



ベッドの上に置かれた小さな手を握る。


なぁ……いつになったら、目を覚ますんだ?

問いかけても返事は来ないし、虚しくなるので……心の中で呟いた。


今日で、1週間。


蓮、悠、雅人の3人が何者かに襲われ、重体に陥り……自分の霊力と引き換えに治癒の術を発動させ、その代償として倒れてから……。



あの日、術を使った直後。

倒れた杏を抱き起こした時、本気で……死を覚悟した。

呼びかけても、ピクリとも動かなかったから。


しかし、首に手を当てて、脈は打っていたからホッとした。


生きてる。


それだけで、本当に安心したんだよな。





でも……それから、コイツ……杏は、目を覚まさない。