しばらく、男女お互いに無言の時間が続いた。
「……何時に終わる」
先に口を開いたのは、黒髪の男。
ふたりの会話はまだ終わらない。
「え?」
「仕事」
ぶっきらぼうに聞く男に、女は徐々に顔をほころばせた。
「明日は、夜の8時には終わります!」
「……9時に来い。1時間だ」
「はいっ!」
満面の笑みを浮かべた女は、明日も男と会えるのがうれしそうで。
多少、頬を赤く染めていた。
ふたりを見ていた黒づくめのヤツは、口角を釣り上げる。
「……明日は……来ないよ?」
そう言うと、持っている金属バットをもう一度握り直した。
「じゃあ、また明日」
ペコッと頭を女が下げて、マンションの中へ消えていく。
それを無言で見届けた男は、その場を離れた。
ひとり、外灯のない道に入って行く。
黒ずくめのヤツは、その男の後に続いた。
気配を殺し、極力足音を立てないように歩いて。
幸い今晩は月のない、真っ暗闇。
まるで、天が自分に味方していてくれるように感じる。
深くキャップをかぶり直し、ケータイをいじっていた男の真後ろに立った。
「……まずはお前からだ。高瀬蓮」
生ぬるい風に溶けてしまうくらいの小さな声で呟いた後。
――ゴンッ!!!!
力いっぱいに振り上げた金属バットを男の頭に目がけて振り下ろす。
「……何時に終わる」
先に口を開いたのは、黒髪の男。
ふたりの会話はまだ終わらない。
「え?」
「仕事」
ぶっきらぼうに聞く男に、女は徐々に顔をほころばせた。
「明日は、夜の8時には終わります!」
「……9時に来い。1時間だ」
「はいっ!」
満面の笑みを浮かべた女は、明日も男と会えるのがうれしそうで。
多少、頬を赤く染めていた。
ふたりを見ていた黒づくめのヤツは、口角を釣り上げる。
「……明日は……来ないよ?」
そう言うと、持っている金属バットをもう一度握り直した。
「じゃあ、また明日」
ペコッと頭を女が下げて、マンションの中へ消えていく。
それを無言で見届けた男は、その場を離れた。
ひとり、外灯のない道に入って行く。
黒ずくめのヤツは、その男の後に続いた。
気配を殺し、極力足音を立てないように歩いて。
幸い今晩は月のない、真っ暗闇。
まるで、天が自分に味方していてくれるように感じる。
深くキャップをかぶり直し、ケータイをいじっていた男の真後ろに立った。
「……まずはお前からだ。高瀬蓮」
生ぬるい風に溶けてしまうくらいの小さな声で呟いた後。
――ゴンッ!!!!
力いっぱいに振り上げた金属バットを男の頭に目がけて振り下ろす。