その小田さんは、今日はひとりではなく……ふたりお連れ様がいた。

ふたりとも男性だ。

う~ん、30代の前半くらいかな。

仕事帰りなのか、小田さんもスーツを着ている。


今日は金曜日だから、飲みに来て下さったのかな?


「いらっしゃいませ」


ニッコリ笑って言うと、顔を赤く染める男性ふたり。


あれ?

この部屋、熱いのかな?

そう思って、頭を傾げると、さらに赤くなるふたり。

不思議で、じーっと見ていたら。


「あ、そうそう。今日はね、私の部下たちを連れて来たんだ。ふたりとも優秀でね。自慢だよ」


あたしの様子に気づいたらしい小田さんが教えて下さる。

小田さんの部下ってことは……このふたりも陸の会社の人?


「小田さん、そんなこと言ってもらえてうれしいですよ」


男性ふたりのうち、黒髪で短髪の人が照れながら返した。


「俺らも、上司に恵まれてうれしいです」


もうひとりの男性も続けて言う。

小田さん、部下の人にも頼りにされているんだね。


「よかったですね、小田さん」


ニコッと笑いかけると、小田さんは照れるように笑った。

すると。


「でもね、杏樹ちゃん。私の会社の社長が素晴らしい人なんだ」


あたしが何も知らないと思ってか、小田さんが話し始める。


「そうそう。うちの社長がすごいんです」


短髪の男性が誇らしげに言った。


社長?


陸のお父様のことかな? それとも陸自身のことかな?